〜慣れた道・慣れた動作こそ、最大の盲点〜
目 次
「見えている」は「反応できる」とは限らない
交通事故の多くは「注意していたのに」「見ていたはずなのに」といった言葉で語られます。
これは、私たちドライバーにとっても決して他人事ではありません。
特に軽貨物の仕事は日常的な運転距離も長く、走り慣れたルートを繰り返す中で、
「予測」よりも「惰性」で走る癖がついてしまうことがあります。
その中で意識したいのが、“車間距離”という当たり前すぎるテーマ。
「分かっているよ」と思った方にこそ、改めて問い直してほしい安全の原点です。

経験年数とともに縮まりがちな「感覚の距離」
新人ドライバーは最初、緊張感から自然と車間距離を広めに取る傾向があります。
しかし、経験を積むにつれて「このくらいで大丈夫だろう」「前の車の動きは分かる」と、
無意識に距離を詰めがちになります。
実際、事故が起きた際に「まさかブレーキがそんなに早く踏まれるとは…」という声も少なくありません。
車間距離は「距離」ではなく「反応の余裕」です。
たとえば時速40kmでも、ブレーキを踏んでから完全に停止するまでには20〜25m以上かかると言われています。
信号待ちや交差点付近では、さらに後続車・横断歩行者・自転車の急な動きなども加わるため、
「1秒分の車間」は命綱そのものです。
現場ドライバーが語る「ヒヤリ」の瞬間
ある北商のベテランドライバーは、こう語ります。
「いつもの納品ルートだったんですけど、急に前の車が停止して…。普段なら余裕で止まれる距離を取ってたつもりだったけど、配送に焦ってたのもあって、ヒヤッとしました。」
幸い、事故には至らなかったものの、彼はその日を境に「毎朝の出発前に“今日は一歩下がって運転するぞ”と心の中で宣言するようになった」といいます。

「慣れた道」こそ、事故の温床
事故や接触は、意外にも“いつも通り”の環境で起こります。
人間の脳は慣れた行動に対して「確認を省略する」習性があるため、少しの油断で注意力が下がります。
車間距離の再確認は、「気持ちのブレーキ」の役割も果たします。
・焦らず、
・詰めすぎず、
・相手の動きに“1テンポ遅れて”反応するつもりで。
その余裕こそが、結果として荷物も、会社も、自分自身の人生も守る手段になるのです。
今日の安全は、あなたのブレーキから始まる
物流業界にとって“事故ゼロ”は永遠の目標です。
それは特別な技術や機械だけでは達成できません。
日々の「意識の質」が積み重なって生まれる成果です。
あなたの今日の車間距離が、誰かの未来を守っているかもしれません。
だからこそ、ハンドルを握るその瞬間から、意識を一歩手前に置いていきましょう。