稼げる軽貨物ドライバーがやってはいけないことは、何か知っていますか?
1つは「誤配」を起こさないことと言われています。でも、ドライバーとして日々業務に取り組んでいれば、誤配を全く起こさないというのは非常に難しいことかもしれません。
なんとなく気をつけるだけでなく、仕組みとしてこうした問題を解消できないか。北商物流では、ドライバーの質向上のために、そうした課題解決への取り組みも積極的に行っています。
今回はその1つとして、北商物流とパートナーシップ契約を結び、ドライバーの技術向上に取り組んでいる、明星大学心理学部教授の竹内康二さんにお話を伺いました。「行動科学」という人の行動や心の専門家である竹内教授に、実際どうやったらドライバーが誤配などのミスを起こさないようになるのか伺いました。
目 次
誤配はなぜ起きるのか?行動科学で紐解く原因
ー冒頭で「誤配」の話しがありました。竹内教授の専門である「行動科学」の観点から、誤配を見ていくと、起きるべき理由があるのでしょうか?
竹内教授
誤配とは、人の意識によって起こされるミスですよね。いくらシステムや技術で改善できても、ゼロにするのは難しいものです。ここで行動科学の知識を役立てると、「人はいかにちゃんと物を見ようとしても、見られない生き物である」という前提に立ちます。
ミスをする生き物だからこそ、気合や意識の力ではどうしようも出来ないんです。だから、どんなタイプの錯覚を起こしやすいのか、どういう時にちゃんと見られない状態に陥りやすいのかを知り、配送時に意識することが大切です。
ー自分がミスしやすい傾向や状況を知るということですね。自己分析が大事になっていくわけですが、日々忙しく働いていると、「あ、この時危ないんだな」みたいな気づきって、なかなか意識できないこともあるのですが……
竹内教授
そうだと思います。北商物流の研修では、具体的に人の特性や、どういった時に錯覚や思い違い、その結果のミスが起きやすいのかを分かりやすく示し、ご自身の傾向を知って考える機会を設けています。例えば、これはなんと読みますか?
「アンドメロダ銀河」
実はこの単語には誤字があります。正しくは「アンドロメダ銀河」と書かれるべきものですが、「アンドメロダ銀河」と書かれています。多くの方が誤字に気づかず、「アンドロメダ銀河」と、正しい読み方をしてしまったのではないでしょうか。これは人の特性である「物事を効率的に処理する能力」が備わっているから起きています。パッと見の印象で、知っている読み方で処理してしまうんですね。
軽貨物配送に置き換えると、例えば伝票の文字が読みにくかったから、なんとなく読める漢字に脳内変換して処理してしまい、その結果誤配してしまったなどが考えられます。
専門家が伝える「ミスが起きやすい状況リスト」
ー科学的に「人がミスを引き起こしやすい仕組み」を知ることで、ある程度注意を促すのですね。
竹内教授
そうです。もっと言えば「人が」ではなく「自分が」といった、ご自身の性格に置き換えてミスの傾向を知ることができれば、高リスクの状況を想定し、その時が来たら具体的に行動を決めたりして集中し直すといった対策をすることが出来ます。
北商物流の研修では、こうした人の特性を踏まえ「錯覚(ミス)の起きやすい状況リスト」を提示し説明しています。以下のリストは、1つではミスは起きにくいですが、3つ程重なると、焦りや注意力の低下につながり、誤配に繋がりやすくなると説明しています。
【誤配リスクが高くなる状況リスト】
- 雨の日
- 暑さで頭が回らないとき
- 他の仕事のことが気になっているとき
- 荷物が少なくて余裕を感じ緊張感がないとき
- いつもより荷物が少ないとき
- 即日配送がたくさん追加されたとき
- 荷物を社内の定位置に置けなかったとき
- 最後の便が遅れ気味で時間に余裕がないとき
- ネットルームでの片付けなどにいつもより時間がかかってしまった
- 安全な駐車ができていないとき
- すぐに車を出さないといけなくて、折りコン・保冷バッグ・保冷剤の片付けができなかったとき
- 配達したら注文した人と受け取った人が異なることがわかったとき
人は常に全集中していることは出来ません。だからこそ、上記のような状況が3つ重なったときは、「あ、今危ないんだ」とミスの気配を察知し、集中しなおすことが大切です。例えば、こうした状況が重なっているなと気づいたら「今日は二重チェックを徹底しよう」など行動を変えることが重要です。
そうした「自分を知る」ことと、必要な状況で必要な集中力を発揮し行動を変えられる人が、評価も高まり、稼げるドライバーになるのではないでしょうか。
マニュアル管理は、人のやる気を削ぐ
ー一般的に、こうした業務面での改善行動は、ルールとして決めてしまう会社も多いと思います。だからこそ、会社によっては「本当に意味があるの?」と思えるような決まりごとが多かったりするのですが……それは専門的な目線で見ると、意味がないのでしょうか?
竹内教授
それだと人の特性として、やる気が削がれる可能性が出てきますね。人は「行動をした後に起きる結果によって、その行動をまた行いたくなる」という性質を持っています。
分かりやすい話では、「ゲームをしたら楽しいから、またゲームをしたくなる」みたいなものです。ここでは「楽しいから」という要素が、また行動したくなることに繋がっています。
専門用語ではこれを「強化子(きょうかし)」と呼んでいます。
人に何か行動を促したいときは、その人がさらに行動したくなる強化子を見つけ、増えるよう操作することが大事とされています。
軽貨物配送の話しで言えば、「二重チェックを徹底しなさい」とルールや指示で縛っても、その行動から得られる要素は「きゅうくつ」「面倒」など、強制されることでのネガティブな印象です。これでは行動は促されませんから、それを出来たことで「褒められた」「達成感が増す」「人の役に立った実感がある」などの気持ち的な手応えに変えられれば、より仕事へのモチベーションも高まり、行動もさらにいい方向に変わることが予想されます。
ー自分で自分を褒めたり、盛り上げたりすることも大事というわけですね。
竹内教授
軽貨物ドライバーのモチベーションの1つは、稼げることだと言われています。これも大事な要素ですが、同時に気持ちが満たされることも大事です。どんなに稼げても、楽しくない仕事は続きませんよね。
ドライバーの方は普段の仕事において、自分はどういった人の役に立っているか、この仕事の面白さややりがいはどこか、いつもどんな風に褒められると気持ちいいかなど、気持ちの面からも自分を探ってみてください。こうした気持ちの満足度を増やすよう意識して行動できれば、ミスを防ぐことや、仕事のモチベーションアップにも繋がり、巡り巡ってさらに稼ぎを増やすといった結果にも繋がっていきます。
北商物流は今度もドライバーの方が輝けるサポート体制を強化します
ーここまで、行動科学のお話を軸に、ドライバーとしてミスを減らし、理想の行動を促す方法について伺ってきました。竹内教授は北商物流において、このような内容の研修を行ったり、個別でドライバーのサポートをしたりすることもあると言います。また、今後は、他業種からドライバー転職を希望するシニアの方向けのサポート講座も行う予定です。
北商物流では、ドライバーの方を何より大切に考え、一人ひとりがより活躍し、将来的にもご自身の希望する未来を切り開いていけるような研修やサポート体制を構築しています。
案件としても、直接契約を中心に、高単価になりやすい薬品配送の業務など、限られた人しか行うことの出来ないお仕事も積極的に行っています。
こうしたいい環境で一緒に働いてみたいと考えるドライバー希望の方は、ぜひ一度ご連絡をいただければと思います。
【本日お話をうかがった人】
明星大学心理学部心理学科・教授。博士(心身障害学)。公認心理師、臨床心理士。専門は応用行動分析学。1977年生まれ。筑波大学博士課程修了後、明星大学専任講師、准教授を経て現職。学校や企業において、一般的な対応では改善が難しい行動上の問題に対して、応用行動分析学に基づいた方法で解決を試みている。「すべての行動には意味がある」という観点から、一般的に「なぜ、そんなことをするのかわからない」と言われる行動を分析することを目指している。
最新著書『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法意志力を使わずに自分が勝手に動き出す!』プロフィールより抜粋