軽貨物ドライバーとして働くうえで、「どんな税金がかかるのか」「どこまで経費にできるのか」は気になるポイントです。車両に関する税金だけでなく、個人事業としての所得税や住民税など、事業運営に関わる税金も複数あります。税金の仕組みを正しく理解しておくことで、節税対策や資金計画を立てやすくなります。
この記事では、軽貨物配送業で発生する主な税金の種類や支払いのタイミング、経費処理の考え方、インボイス制度への対応までをわかりやすく解説します。独立や副業を考えている方も、ぜひ参考にしてください。
参考:軽貨物での副業は稼げる?始め方からリアルな収入・注意点まで徹底解説

軽貨物配送の北商物流
北商物流株式会社は、2011年に東京都北区に代表取締役社長・瀬戸口敦が創業しました。社長の瀬戸口は業界団体の軽貨物ロジスティクス協会理事長も務め、常に業界のイノベーションと品質向上を牽引。ガイアの夜明けやNHK、新聞各紙にも取り上げられ、メディアから注目されています。ネットスーパーや企業配送、ルート配送、3PLなど幅広い軽貨物業務を展開し、稼働台数は1日150台超の規模で安定運営中です。
目 次
軽貨物配送業に関係する税金は車両と事業の二種類
軽貨物ドライバーとして働くうえで、税金は避けて通れない大切な要素です。軽貨物配送業の税金は大きく「車両にかかる税金」と「事業にかかる税金」の2種類に分けられます。
車両にかかる税金は自動車税や重量税など、車を所有・使用することに伴う費用で、事業にかかる税金は所得税や住民税など、個人事業主としての収益に関係するものです。
車両にかかる税金
軽貨物車を使って配送業を行う場合、車両そのものに関する税金が毎年発生します。主なものは、自動車税種別割・自動車重量税・自賠責保険料・任意保険料の4つです。
自動車税種別割は毎年4月1日時点の所有者に課税され、黒ナンバー登録の軽貨物車では年間5,000円前後となるケースが一般的です。
自動車重量税は車検時に支払うもので、13年・18年を超えると税額が上がります。
自賠責保険料は、すべての車両に加入が義務付けられた「強制保険」で、事故被害者の救済を目的とし、車検期間に応じて支払います。未加入のまま走行すると罰則の対象になります。
任意保険料は加入が義務ではありませんが、実際には加入を強く推奨します。自賠責保険ではカバーしきれない対人・対物の賠償や修理費用を補償でき、事故時のリスクを大幅に軽減します。補償内容を充実させるほど保険料は高くなりますが、事業継続の安心を得るうえで欠かせません。
一般車両の白ナンバーと、事業用車両の黒ナンバーでは登録区分が異なるため、課税区分や保険料の扱いにも違いがあります。購入時、車検時、毎年課税のものを整理しておくことで、出費の見通しが立てやすくなります。
参照:
自動車重量税のあらまし|国税庁
購入・リース・ローンの違い
車両の導入方法によって、税金や経費の扱いは大きく変わります。
現金購入やローン購入の場合、所有者は自分になるため、自動車税や保険料などすべての支払い義務が発生します。ローンでの購入時は、車両が減価償却の対象となり、支払利息を経費として計上できます。
一方、リース契約では車の名義がリース会社になることが多く、税金はリース料に含まれる形になります。リース料全体を毎月の経費として処理できるため、資金繰りを安定させやすい点が特徴です。短期利用ならレンタカーも選択肢で、利用料を全額経費にできます。
参考:軽貨物 車両リースは「やめとけ」と言われるのはなぜ?独立前に知っておきたいトラブルと回避策|北商物流コラム
車両購入費の減価償却とは
車両を購入した場合、その費用は一度に全額を経費にできません。事業で使う資産として「減価償却」という形で複数年に分けて計上します。
軽貨物車の場合、法定耐用年数は通常4年ですが、中古車を購入した場合は残存年数や経過年数に応じて短縮されることがあります。
また、ローンでの購入では減価償却の対象となりますが、リース契約では車両の所有権がリース会社にあるため、減価償却は不要です。その代わり、毎月のリース料を経費として処理します。
購入・リース・ローンそれぞれの仕組みを理解し、会計処理を誤らないよう注意が必要です。
個人事業に関わる税金
軽貨物配送業を個人事業として行う場合、売上から経費を差し引いた「所得」に対して課税されます。主な税金は、所得税・住民税・個人事業税・消費税の4種類です。
所得税は確定申告で納付し、住民税は前年の所得に基づいて翌年課税されます。
個人事業税は事業所得が290万円を超えた場合に課税対象となり、軽貨物運送業も該当します。さらに、年間売上が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生し、インボイス登録も必要になります。
また、開業届を提出する際に青色申告を選択すれば、特別控除などの節税効果が得られます。副業として軽貨物を行う場合でも、年間所得が20万円を超える場合は申告が必要です。正しい知識を持って税務処理を行うことが、長く安定して働くための基盤となります。
軽貨物配送業の経費に計上できるもの・経費計上できないもの
軽貨物配送業では、日々の業務で発生する支出の多くが「経費」として処理できます。経費計上を正しく行うことで、課税所得を抑え、手元に残る利益を増やすことができます。ただし、すべての出費が経費として認められるわけではありません。業務との関連性が明確であることが条件です。この章では、経費として計上できるもの・できないものの具体例と、注意すべきポイントを紹介します。

経費計上できるもの
軽貨物ドライバーが経費として認められやすい項目には、業務上の車両運用や通信に関わる費用が多く含まれます。
代表的なものは、燃料代、高速道路料金、オイル交換や車検などの整備費用、任意保険料、タイヤ交換費などです。これらは配送業務に直接関わるため、全額を経費に計上できます。
また、スマートフォンの通信費や業務連絡用アプリの利用料、会計ソフトの利用料なども経費対象です。自宅を事務所として使用している場合は、光熱費や家賃の一部を「按分」して経費にできます。
領収書やレシートを必ず保管し、業務との関連性を説明できるようにしておくことが重要です。特に、年間を通じて支出が多い燃料費やメンテナンス費用は、経費としての管理が節税につながります。
経費計上できないもの
一方で、業務に直接関係のない支出は経費として認められません。
たとえば、家族との私的な外食費、日用品の購入費、娯楽目的のガソリン代などは対象外です。
また、プライベートでも使用している車両やスマートフォンの費用は、全額を経費にすることはできません。業務使用分の割合を明確にして「按分」処理を行う必要があります。
さらに、罰金・反則金、通勤以外の駐車違反金なども経費として認められません。これらは事業とは関係のない個人的な支出とみなされます。
経費として処理できるか迷う場合は、税理士や会計ソフトのアドバイス機能を活用するのがおすすめです。経費の線引きを正しく行うことで、税務調査時のトラブルを防ぎ、安定した経営管理につながります。
インボイス対応と消費税
軽貨物配送業を個人事業として行う場合、消費税やインボイス制度への理解も欠かせません。インボイス制度は、取引先が仕入税額控除を受けるために必要な「適格請求書」を発行・保存する仕組みです。
免税事業者として活動していると、取引先から登録を求められるケースもあります。ここでは、課税・免税事業者の違いや、軽貨物ドライバーにおけるインボイス登録の判断基準、消費税納税の基本を解説します。
インボイス制度の概要
2023年10月に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の課税取引を透明化するための制度です。
事業者は、取引先に対して「インボイス(適格請求書)」を発行し、発行側・受け取り側ともに保存することで、仕入税額控除が適用されます。インボイスを発行できるのは「適格請求書発行事業者」として登録している課税事業者のみであり、免税事業者はインボイスを発行できません。
軽貨物配送業の場合、企業からの委託業務を請け負うケースが多く、取引先企業が仕入税額控除を行うため、登録を求められることがあります。登録の有無は取引条件に影響するため、開業初期から制度を理解しておくことが大切です。
課税事業者と免税事業者の違い
課税事業者とは、年間の課税売上高が1,000万円を超える事業者で、消費税を納める義務があります。一方、売上が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」となり、消費税を納付する必要がありません。
ただし、免税事業者はインボイスを発行できないため、取引先が仕入税額控除を受けられず、取引条件が不利になる可能性があります。
そのため、たとえ売上1,000万円未満でも、取引先の要望に応じて自発的に課税事業者登録を行うドライバーも増えています。自分の取引形態や今後の売上見込みを考慮し、課税・免税どちらを選ぶかを判断することが重要です。
消費税の納税義務と請求書発行の注意点
課税事業者として登録した場合、売上に対して消費税を預かり、仕入れや経費で支払った消費税との差額を国に納めます。納税は原則として年1回、確定申告時に行います。
請求書を発行する際には、インボイス制度に対応した記載が必要です。具体的には、登録番号、取引日、取引内容、税率ごとの税抜金額と消費税額などを正確に記載します。
また、軽貨物ドライバーの場合、燃料代や高速料金などにも消費税が含まれているため、仕入税額控除を適切に行うことが節税につながります。請求書の形式や発行方法は会計ソフトを活用することでミスを防ぎ、取引先との信頼関係を保てます。
納税の年間スケジュールと納付・申告の期限
軽貨物配送業では、車両に関する税金や事業所得に関わる税金など、複数の納付時期が重なります。特に個人事業主として活動する場合、確定申告や各税目の期限を正しく理解しておくことが重要です。
納付の遅れは延滞税や加算税の原因となるため、年間のスケジュールを整理し、計画的に準備する必要があります。ここでは代表的な税金の納付・申告のタイミングを時系列で紹介します。
主な税金と納付時期の目安
軽貨物ドライバーに関係する主な税金と納付時期は次のとおりです。
まず「自動車税種別割」は毎年4月1日時点の所有者に課税され、5月末までに納付します。「自動車重量税」は車検の際にまとめて支払うもので、新車登録時や更新時に発生します。
個人事業主としては「所得税」と「住民税」の申告・納付が大切です。
所得税は毎年2月16日〜3月15日に確定申告を行い、3月15日が納付期限です。
住民税は前年の所得をもとに市区町村が6月ごろに通知し、年4回(6月・8月・10月・翌年1月)に分けて支払います。
売上が1,000万円を超える課税事業者は「消費税」の申告・納付も必要で、こちらも原則3月末が期限です。さらに「個人事業税」は年2回(8月と11月)に納付書が届きます。これらをまとめてカレンダー化しておくと、資金繰りの見通しが立てやすくなります。
申告・納付をスムーズに行うための準備
税金の納付を確実に行うためには、年間を通じて帳簿管理を徹底することが重要です。毎月の売上・経費を会計ソフトに入力し、領収書を整理しておくと確定申告時の負担を大きく減らせます。
電子申告システム「e-Tax」を活用すれば、自宅からオンラインで確定申告や消費税申告が可能です。マイナンバーカードを利用した本人確認や、銀行口座からの自動引き落とし(ダイレクト納付)にも対応しており、郵送や窓口提出より効率的です。
また、納税資金は事業用口座に別途積み立てておくと安心です。収入が変動しやすい配送業では、突然の出費や税金の支払いにも柔軟に対応できるよう、毎月一定額を確保しておくと良いでしょう。計画的な資金管理が、安定した事業運営につながります。
軽貨物ドライバーの税金に関するよくある質問
Q1. 軽貨物の税金はいくらかかりますか?
- 車両に関する主な税金は「自動車税種別割(年間約5,000円)」と「重量税(車検時に数千円〜1万円程度)」です。これに加え、事業所得に応じた所得税や住民税などが発生します。車の種類や年数、走行状況により変動します。
Q2. リース車の場合、税金は誰が払うのですか?
- 一般的に、自動車税はリース会社が納付し、その分が毎月のリース料に含まれています。ドライバー側はリース料を経費として処理すれば問題ありません。契約内容によって異なるため、契約書で確認することが大切です。
Q3. 副業として軽貨物をしている場合も確定申告は必要ですか?
- はい。副業でも、年間所得(売上−経費)が20万円を超える場合は確定申告が必要です。申告を怠ると追徴課税のリスクがあります。副業であっても、帳簿を付けて経費を整理しておくと安心です。
Q4. 青色申告と白色申告の違いは何ですか?
- 青色申告は正規の帳簿を付けて申告する方法で、最大65万円の青色申告特別控除や赤字の繰越控除など、多くの節税メリットが受けられます。白色申告は手続きが簡単ですが、控除額が少なく、節税効果は限定的です。
また、青色申告を利用するためには、事前の申請が必要です。開業した年に青色申告を行う場合は、原則 開業日から2か月以内 に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。
前年から事業を行っている場合は、その年の3月15日までに提出しなければ、当年分の青色申告は適用されません。 この点は知られていないことが多く、期限を過ぎると白色申告しか選べなくなるため注意が必要です。
青色申告は帳簿付けの手間はありますが、会計ソフトを使えば記帳の負担は大幅に軽減できます。長く事業を続ける人ほど、控除や節税効果を最大限に活かせるため、軽貨物ドライバーでも青色申告を選ぶケースが多くなっています。
Q5. 税金の支払いを忘れた場合どうなりますか?
- 納付期限を過ぎると、延滞税や加算税が課されることがあります。特に確定申告後の所得税や住民税は遅延が多いため、期限前に余裕を持って準備しておくことが大切です。口座振替やe-Taxを利用すれば納付忘れを防げます。
正しく納税し、安定した事業運営につなげよう
軽貨物配送業では、車両に関する税金と個人事業に関する税金の両方を正しく理解することが重要です。
自動車税や重量税などの固定費に加え、所得税や消費税といった事業関連の税金は、確定申告の内容によって金額が大きく変わります。日々の経費管理や帳簿記録を丁寧に行うことで、納税時の負担を減らし、安定した収支を実現できます。
また、税務処理に不安がある場合は、会計ソフトや税理士のサポートを活用するのも有効です。
北商物流では、開業や経理面もサポートしています。ドライバーのみなさんには配送業務に専念してもらい、税務リスクを減らしています。案件増加に伴い、ドライバーを積極募集しています。ぜひ北商物流の採用サイトをご覧ください。
編集・執筆:酒井安澄